がん告知の絶望から希望までのプロセス

がん告知を受けた患者さんは、どのような心理状態となるのか、意識構造はどのように変化していくのかを、 第9回アジア臨床腫瘍学会 学術集会に於いて冨田 きよ子先生が発表されました。

冨田 きよ子先生は、がん患者の心の変化を直下型地震に例えて述べておられました。

まずは衝撃です。

最初の2~3日は、その時の記憶が擦れているくらいの衝撃を受けます。そして否認や絶望や怒りを覚えます。

自分の心が抱えきれないほどの悲しい出来事はなかったことにしたいと、「嘘だ」という気持ちが強くなります。
また、医学的な知識が乏しい人ほど絶望感が強くなる傾向があります。そしてどうして不摂生しているあいつではなく自分がガンにならなければいけないのだ、といった怒りの感情も湧き出てきます。

その後、1週間から2週間が経過すると回復期となります。
日常生活に支障のない心のレベルとなります。
しかしながら、普段通りに楽しいことを楽しめるほどの余裕はありません。

かろうじて通勤や通学や家事をこなしている状態です。はたから見たら元気そうですが、余震がまだ続いている状態だと言えるでしょう。

だいたい最初の1~2週間で見かけ上は適応してきたように見えますが、実際には川に転落して溺れた人がまだ川の中にいる状態だと言えます。溺れそうになっていたのが川の中を歩いているけど、まだ陸地には上がっていません。

1年から5年くらいは、急流すべりの状態です。

但し景色は楽しめません。頭痛がしたら脳へ転移したのかと思うし、腰が痛ければ骨に転移したのかと思います。

早い人で3年後くらいで気を緩め始めます。
従って人生設計を立て直すのは、がん告知から3年から5年かかります。

その後価値観が変わる人が多いと、冨田 きよ子先生は仰っています。

心の内面や豊かさを重視するようになり、社会的な地位や成功よりも家族や友人との関わりを重視するようになるケースが多いと述べられておられます。

冨田 きよ子先生は、がん告知をうけた患者さんのこのような心の変化や意識構造の変化を知ったうえで、医師や看護師は治療やケアを行っていくことの重要さを、述べてくださいました。